新築住宅で太陽光発電は設置すべき?義務化や後悔しないための対策
太陽光発電が推進され、固定価格買取制度(FIT)が施行されてから10年以上が経過しました。また、再生可能エネルギーに関する制度や法律も改正されていき、より太陽光発電の導入が推し進められています。
さらに、各地方自治体も太陽光発電の導入を推進しており、現在では、東京都や京都府、神奈川県川崎市で太陽光発電の義務化の動きがあります。ただ、この義務化については一定の基準が設けられており、詳細を正確に把握できている方は多くありません。
そこで本記事では、新築住宅での太陽光発電の設置について、条例による義務化や対策などを交えて解説します。
目次
太陽光発電でどのくらい電気代が安くできるか?
太陽光発電を利用すれば、1kWあたり「年間約3.1万円」の電気代が節約可能です。ここではこの根拠について、以下の条件をもとに解説します。
- 容量1kWの太陽光発電の年間の平均発電量は1,000kWh
- 1世帯が1年間に消費したエネルギーは、全国平均で電気が4,175kWh
- 1kWhあたりの電気料金の目安は31円/kWh
上記条件をもとに1kWあたりでどのくらいの節約が可能なのかを算出した計算は以下のとおりです。
1kW×1,000kWh×31円/kWh=31,000円
平均的に導入されている太陽光発電の容量は4〜5kWであるため、「年間124,000〜155,000円」の節約が可能です。
新築で太陽光発電を設置する4つのメリットとは?
新築住宅に太陽光発電を設置すると、電気代が抑えられる以外にもさまざまなメリットがあります。設置した太陽光発電を効率良く運用するためにも、それぞれのメリットを理解しておくことが大切です。
ここでは、新築で太陽光発電を設置するメリットについて、4点解説します(※)。
- 自家発電によって、電気代が抑えられる
- 余剰電力で、売電収入が得られる
- 補助金を使えば、費用負担が抑えられる
- 停電しても使える
(※)本記事では、太陽光発電の容量は「5kW」と仮定して説明します。
①自家発電によって、電気代が抑えられる
新築住宅に太陽光発電を設置すれば、発電した電気によって生活に必要な電気をまかなえます。以下は環境省の委託で判明した調査結果です。
- 5kWの太陽光発電を導入している住宅が年間で発電する電力量の全国平均は6,515kWh
- 1世帯が1年間に消費した電気量は、全国平均で電気が4,175kWh
参考:株式会社エックス都市研究所、アジア航測株式会社、デロイトトーマツコンサルティング合同会社「令和3年度 再エネ導入ポテンシャルに係る情報活用及び提供方策検討等調査委託業務報告書」
上記を前提とすれば、生活に必要な電気は太陽光発電によってまかなわれています。
②余剰電力で、売電収入が得られる
太陽光発電によって発電された電気で、自家消費分以上のものは電力会社に売却できます。
現在、家庭用の太陽光発電(10kW未満)の場合、1kWhあたり「16円」の売電価格で売却可能です。余剰電力は年間で「約2,300kWh(※)」とされるため、「年間約3.7万円」の収益が発生します。
(※)「自家発電によって、電気代が抑えられる」に記載の調査結果から算出しています。
③補助金を使えば、費用負担が抑えられる
太陽光発電の設置にあたって、国や地方自治体では補助金による支援をおこなっています。この補助金を活用すれば、太陽光発電の設置に必要な費用を抑えられます。以下は補助金の例です。
地域 | 対象設備 | 補助金 | 交付申請受付期限 |
---|---|---|---|
東京都 | 新築住宅に設置する太陽光パネル | 1kWあたり12万円(上限36万円) | 令和6年12月末 |
大阪府堺市 | 太陽光発電システム・燃料電池システム等から2種類以上 | 2万円/kWまたは1/5のいずれか低い方の額(上限6万円)など | 令和7年2月14日 |
千葉県千葉市 | 太陽光発電システム | 出力1kWあたり1.5万円(上限6万円) | 令和7年1月31日 |
補助金は申請方法や必要な書類などは各地方自治体で異なるため、必ず専門家に依頼しましょう。ミライでんちでは、太陽光発電や蓄電池の導入に際して、補助金の活用方法に関する無料アドバイスも提供しております。
④停電しても使える
太陽光発電で発電した電気は、蓄電池を利用すれば、非常用の電源として利用できます。近年では大型の震災が懸念されており、非常用の備えができる点は注目されています。
設置には太陽光発電以外にも必要な設備があるため、もし検討していれば事前に確認しておきましょう。
太陽光発電の2つのデメリットとは?対策も紹介
メリットの多い太陽光発電ですが、ランニングコストや太陽光パネル以外の寿命によるデメリットがあります。そのため、デメリットもきちんと確認したうえで、太陽光発電機の設置を決めることをおすすめします。
ここでは、太陽光発電のデメリットについて、対策も交えて2点解説します。
- ランニングコストがかかる
- 天災や事故で破損・滅失するリスクがある
①ランニングコストがかかる
太陽光発電は初期費用以外に、安全に長く使用できるようにするために、定期的なメンテナンスや保険などのランニングコストがかかります。以下は代表的なランニングコストの種類と費用をまとめているため、参考にしてください。
ランニングコストの内訳 | 頻度 | 費用 |
---|---|---|
メンテナンス | 3〜5年に1回 | 5kWの場合は1回あたり平均4.7万円程度 |
災害による破損に備えた保険 | 契約によって異なる | 家財保険の対象になる場合がある |
また、太陽光発電の設備が使用できなくなった場合、設備の買い替えが必要です。以下では太陽光発電設備それぞれの寿命や費用についてまとめています。
装置名 | 寿命 | 交換費用 |
---|---|---|
パワーコンディショナー | 10〜15年 | 10~15万円 |
蓄電池 | 10〜15年 | 平均22.4万円 |
太陽光発電システム | 30年以上17年(※法定耐用年数は17年) | メーカー保証内容によって無料で修理交換できる場合がある |
②天災や事故で破損・滅失するリスクがある
天災や事故で太陽光発電設備が破損・滅失するリスクがあります。しかし、破損・滅失理由やメーカー保証内容によっては修理や交換などの対応をしてもらえないケースがあるため、あらかじめ契約内容を確認しておくことが大切です。
ただ、太陽光発電や保険に関する専門的な知識を要し、選択を誤ればトラブルに発展する可能性もあり、専門家の意見を聞くことをおすすめします。
太陽光発電を設置するためにかかる費用と内訳とは?
太陽光発電の設置には太陽光パネルやパワーコンディショナー、また架台や工事費などのさまざまな費用が必要です。補助金の利用も可能ではあるものの、検討する際には全体像を把握してから具体的な設置内容を決めていくことをおすすめします。
以下では太陽光発電を設置するために必要な機器と容量1kWあたりにかかる費用をまとめました。
機器の名称 | 容量1kWあたりにかかる費用 |
---|---|
太陽光パネル | 147,000円 |
パワーコンディショナー | 47,000円 |
架台 | 30,000円 |
その他 | 3,000円 |
工事費 | 76,000円 |
値引き | -15,000円 |
合計 | 288,000円 |
【損しないの?】太陽光発電の初期投資回収にかかる期間
太陽光発電の初期投資には大きなお金が必要な一方で、電気代の節約分や売電収入を踏まえれば固定価格買取制度(FIT)の期間内での回収も現実的です。
ここでは、以下のような条件にもとづき、太陽光発電の初期投資回収にかかる期間を算出します。
- 一般的な家庭に導入される太陽光発電の容量は「5kW」
- 1kWあたりの導入費用は「28.8万円」
- 太陽光発電の電力をすべて自家消費にあてた
- 1kWhあたりの電気料金の目安は「31円/kWh」
- 平均的な年間発電量は、太陽光パネルの容量1kWにつき「1,000kWh」
上記条件をもとに5kWの太陽光発電でどのくらいの売電収入を得ることが可能なのかを算出した計算は以下のとおりです。
- 導入費用:5kW×28.8万円/kW=144万円
- 自家消費による電気代削減:5kW×1,000kWh×31円/kWh=15.5万円
- 自家消費による回収期間:144万円÷15.5万円=9.290…年
自家消費だけで考えると、回収期間は「9年超」ということがわかります。ただ、実際には消費電力が発電量よりも下回り、余剰分を売電収入で得ることもあるでしょう。ケースによって具体的なシミュレーションは異なるため、専門家に相談したうえで算出してもらうのがおすすめです。
関連記事:太陽光発電の初期費用は回収できないのか?何年で元が取れるのかシミュレーションで解説
太陽光発電の設置は義務?義務化に関する詳細を紹介!
現在、東京都、京都府、神奈川区で太陽光発電の設置が義務化されています。しかし、設置義務の対象は、対象地域で大手ハウスメーカー・工務店で新築を建てる場合のみです。
また、対象地域で新築を建てる場合でも、必ずしも設置義務が発生するわけではなく、さらには全国の方が義務対象義務がないことにも注意が必要です。
義務化される地域 | 対象建物 | 設置義務者 | いつから |
---|---|---|---|
東京都 | 大手ハウスメーカーが建てる新築住宅 | 大手ハウスメーカー等 | 2025年4月 |
京都府 | 延べ面積300㎡以上2,000㎡未満の新築または増築建物 | 建築主 | 2022年4月 |
神奈川県川崎市 | ①延べ床面積2,000㎡以上の建物 ②大手ハウスメーカーが建てる新築住宅 | 大手ハウスメーカー等 | 2025年4月 |
まとめ:新築で太陽光発電を活用すれば、節電できて、災害対策にもなる!
本記事では、新築住宅での太陽光発電の設置について、条例による義務化や対策などを交えて解説しました。新築に太陽光発電を設置すれば、生活で利用する電気代の大部分を節約できます。また、災害などで停電になった際に、電気が使用できることも大きなメリットでしょう。
しかし、設置には大きなお金が必要であり、またランニングコストも発生してしまう点には注意が必要です。必ず設置から数十年先までのシミュレーションを確認したうえで、目的に合ったプランを検討することが大切です。
ミライでんちでは、再生可能エネルギーを活用した、電気を自給自足できる生活を提案しています。
太陽光発電や蓄電池の導入に際しては、補助金の活用方法に関する無料のアドバイスも提供しておりますので、お気軽にお問い合わせください。