【プロ目線】蓄電池の自作は危険だらけ!オフグリットを目指すなら・・・
「蓄電池が自作できる方法を知りたい」
この記事を読んでいる方は、このように考えてるのではないでしょうか?しかし、知識を持たない方が蓄電池を自作するのは危険が伴うため、注意が必要です。
実際のところ、プロの視点からいうと蓄電池の自作はおすすめできません。
とはいえ、「家庭用蓄電池は初期費用が高すぎるから導入に躊躇する」「自作できるなら蓄電池を設置したい」と考えている方は多いのではないでしょうか?
そのため、最低限の安全を保つためのポイントや必要な材料については、本記事でご紹介できればと思います。
蓄電池の自作を検討している方は、ぜひ最後まで目を通してください。
目次
蓄電池を自作するには蓄電池システムの理解が重要
蓄電池を自作する際には、まず蓄電池や電気への理解を深めてください。
蓄電池は電気を扱う製品ですので、準備を怠るとショートや感電など、怪我につながる可能性があります。
この項では蓄電池の基礎知識として以下を解説します。
- 蓄電池とは?
- 蓄電池システムの仕組み
- 主な蓄電池の材質はリチウムと鉛
しっかりと読めば、記事後半の話もすんなり理解できるようになるので、ぜひ目を通してください。
蓄電池とは|電気の充放電を行う設備
蓄電池とは、電気を蓄えられる装置をいいます。2次電池とも呼ばれ、繰り返し充放電ができるのが特徴です。アルカリ電池などの使い捨ては1次電池といわれています。
蓄電池はよく「バッテリー」と呼ばれることもありますが、特に大きな違いはありません。
蓄電池システムの仕組み
家庭用の蓄電池システムは主に蓄電池とパワーコンディショナーで構成されています。このパワーコンディショナーは電気の計測と直流を交流にするインバータ、交流を直流に変更するコンバータなどが搭載された制御装置の名称です。
車に使用されているバッテリーは直流12Vの出力が一般的なので、カーナビやスマホの充電で使用する際にはインバータによって100Vが出力されるよう変換されています。
蓄電池も同様に、直流から一般家電で電気を使用できるように変換が必要です。
電気の流れとしては以下の順番になります。
- 買電または太陽光によって蓄電池へ電気を送る
- 買電の場合は交流なので、直流に変更して充電する
- 蓄電池からの直流をインバータを用いて交流に変換する
- 各家電で使用する
上記のことから、蓄電池単体では活用できないとわかります。
主な蓄電池の種類|リチウム・鉛
蓄電池は利用されている原材料が複数ありますが、主に使用されているのはリチウムイオンと鉛の2種類です。
それぞれの特徴を以下の表を参考にみてみましょう。
リチウムイオン電池 | 鉛電池 | |
材料 | ・有機電解液・炭素型素材・リチウム保有金属酸化物 | ・鉛・二酸化鉛・希硫酸 |
容量 | 鉛の約2倍 | 一般的 |
出力 | 大きい | 普通 |
充電速度 | 早い(急速充電はリチウムイオンの発展によるもの) | 遅い |
価格 | 高い | 安い |
寿命 | 10〜15年 | 約5年 |
主な用途 | スマートフォン・ロボット等 | 自動車・非常用設備等 |
メンテナンス | 寿命までメンテナンスフリー | バッテリー液の補充などが必要 |
おそらく自作蓄電池に使用するバッテリーは、自動車用の鉛蓄電池を用意するかと思います。
鉛蓄電池は、複数個用意しないと大きな容量を作り出せないので、安価とはいえ10万円程度はかかるでしょう。また、中古だと寿命が短いので新品を購入すると良いです。
蓄電池を自作する場合に絶対に守るべき注意点
蓄電池を自作する際に、必ず守ってほしい事項があります。
- バッテリーの規格を確認する
- 接続箇所は絶縁素材で保護
- 国家資格「電気工事士」が必要
- 使用する電線の径種とシースの材質
- 自作蓄電池システムと屋内配線の間にブレーカーを設置
これらを守れば、最低限安全な蓄電池を作れるようになります。それぞれの項にて注意点やポイントを記載してありますので、ぜひお読みください。
蓄電池に使用するバッテリーの規格
家庭用の蓄電池は、容量を大きくするために複数の電池ユニットを並列に接続しています。この構造から電池ユニットの総称は『セル』と呼ばれており、電動工具のバッテリーなどもこの構造が用いられています。
突然ですが、バッテリーを充電中に突然発火し、火事になったという事故を聞いたことはありますか?
本来電池ユニットごとに、漏電や異常電圧などを検知するヒューズと呼ばれる安全装置をつけなければなあらないのですが、格安で販売されているバッテリーの中には一つの電池ユニットにしかヒューズが取り付けられていない場合があります。
このようなバッテリーは過充電や外部的破損などが原因で、発熱から発火、最悪の場合爆発といった危険性があります。
日本の製品規格いわゆる『JIS』が記載されている製品は、発火などの危険性が限りなく取り除かれているので、規格を受けている製品を利用するようにしてください。
接続箇所の保護方法
接続箇所を露出したままだと非常に危険です。水や埃、湿度などによって絶縁破壊が起きた場合、ショートによる発火、バッテリーの損傷による電解液漏れ、電線同士の接触によるショートが起きる可能性があります。
電線相互の接続は、経済産業省が定める電気設備基準を遵守しなければなりません。屋内配線の接続に関する主なルールは以下の通りです。
- 接続にはリングスリーブ・差込形コネクタなどを使用。またはハンダ付けする。
- 電線の引張り強さを20%以上減少させてはならない。
- 接続部分は絶縁効力のあるもので被覆またはボックス内に隠匿する。
接続箇所は絶縁性が高いカバーを取り付けるか密閉された防火ケースへの収納が必要です。たとえ個人的使用だとしても、上記で紹介したルールを守るようにしてください。
国家資格が必要な作業範囲
まず、家庭用蓄電池の設置には最低でも第2種電気工事士の資格が必要です。
電気工事士でなければできない作業は『電気工事士法施行規則第2条第1項』に定められています。蓄電池を自作する場合の作業は、場合によっては定められている項目に該当する可能性があります。
しかしこれらの作業は、電気工事士の資格を保有する者の補助作業だった場合は作業が可能になります。作業を行う場合は電気工事士を保有し、実務経験を積んでいる方に協力してもらうか、専門業者の力を借りてください。
使用する電線の径種とシースの材質
蓄電池を自作する際に使用する電線は、なんでも良いわけではありません。電線は、径種(電線の太さ)やシース(電線のカバー、被覆とも呼ばれる)の材質を選定する必要があります。
電線の太さやシースの材質によって、流せる電流の大きさである許容電流が決められているからです。
電流の大きさは以下の式で求められます。
【電流(A)=電圧(V)÷ 電力(W)】
たとえばエアコンの消費電力が約600Wですので、式に600Wを入れます。次にエアコンが200V対応だった場合、式は以下のようになります。
【200V ÷ 600W =0.33A】
このように、自作された蓄電池で電気を供給する家電の電流の大きさを調べて、使用する電線の径種を選定しましょう。
屋内配線で主に使用されている3*2.0VVFの許容電流は20Aです。
蓄電池で賄う家電のトータルの電流が20Aを超える場合は、これより太い径種を使用するようにしてください。
また、シースの材質は耐火性のものを選びましょう。
自作蓄電池システムと屋内配線の間にブレーカーを設置
通常家庭用蓄電池を設置した場合、蓄電池と住宅用分電盤の間に蓄電池用配電盤を設置します。この蓄電池用配電盤によって、蓄電池側で起きた不具合から住宅側の電気設備を保守する役割を持っているからです。
もし、住宅用分電盤に直接蓄電池からの電気を接続した場合、何らかの不具合があれば家電や照明などが破損する可能性が高くなります。
さらに、誤ってブレーカーの一次側(配電線路側)に接続し問題が発生した場合、電力会社が絡む問題に発展する可能性もあります。
蓄電池側と住宅側を接続する場合は、必ずブレーカーを設置するようにしてください。
自作蓄電池の作り方
この項では自作蓄電池に必要な情報をまとめています。
- 必要な材料
- バッテリー・ソーラーパネル・蓄電池・その他との接続方法
- 販売されているキッドを利用
それぞれの項にて注意点も記載してあります。ぜひ目を通してください。
必要な材料
蓄電池を自作する場合は以下を揃えましょう。
- 太陽光パネル
- チャージコントローラー
- 蓄電池
- インバータ
- 各種計測器
- 電線ケーブル
- 接続端子
材料費は個数にもよりますが、5万〜30万円程度で集められます。ただし、海外製の粗悪品や出どころのわからない中古品は、劣化・安全規格の素通りの可能性があります。
これらの製品は全て日本規格(JIS)の対象ですので、購入前に必ず確認してください。
バッテリー・ソーラーパネル・蓄電池・その他との接続方法
太陽光パネルを起点として、接続していく順番は以下の通りです。
- 太陽光パネル
- チャージコントローラー(電圧測定や発電量の管理)
- 蓄電池
- インバータ
- 電圧・電流計測器
- ブレーカー
蓄電池には正極・負極があります。ここを間違えてしまうと、充電も放電もできなくなるので、しっかりと蓄電池の特性を理解して接続しましょう。
電線同士の接続を行う場合は、差込型コネクタが簡単でおすすめです。並列接続も容易にできるので、事前にいくつか用意しておくと良いです。
販売されているキッドを利用
自作の危険性を回避したいのであれば、市販されているキッドの使用が安全かつ確実です。
家電の電力を賄うことは難しいですが、消費電力が小さい家電を短い時間なら動かせますし、スマホの充電や照明程度であれば問題ありません。
増設する・容量を大きくするなどのカスタマイズはメーカー保証の対象外になってしまうため、実行しないように注意してください。
【要チェック】自作蓄電池の欠点とは
自作蓄電池は、電気を生業としている立場から見ると危険しかありません。危険を限りなく取り除いたとしても、自作した蓄電池には以下の欠点が存在します。
- 売電するのは非常に難しい
- 電気火災が発生した時に火災保険がもらえない可能性が高い
自作蓄電池を作りたい方は、必ずご覧ください。
売電するにはさまざまな条件が必要
結論からお伝えすると、自作蓄電池にて発電した電気を売電するのは、非常に難しいです。というのも、売電するためにはさまざまな届出や審査が必要だからです。
以下に必要な届出をご紹介します。
- 事業企画認定申請
- 系統連系申請
- 設置費用報告
- 増設費用報告
- 運転費用報告
また、売電先の電力会社による電気の計測も審査項目です。電圧や周波数、安定度などさまざまな観点から、系統電路との接続が可能か判断されます。
自作された蓄電池は、PID現象・電気ロスによる電圧降下といった問題が起きやすいので、十分に注意してください。
電気火災が発生した時に火災保険がもらえない可能性がある
火災保険には保険が適用されない条件があります。その条件は、「初期不良・施工時にミス」または「経年劣化」によるものです。
電線に使用されているシースは、屋内用電線は日光や雨風にあたる想定で作られていないため、経年劣化が起きやすいものがあります。
また、接続箇所や自作による電気設備が火災原因だと発覚すれば、責任は施工者本人になるため、火災保険の適用外となる可能性が高いです。
たとえ、知り合いの電気工事士に協力してもらったとしても、自賠責になると考えられるため、自己責任になってしまうと理解しておきましょう。
自作蓄電池と家庭用蓄電池との比較
自作蓄電池は家庭用蓄電池の購入が難しいと感じた方が開発したものです。
では自作蓄電池と家庭用蓄電池はどのような違いがあるのかみてみましょう。
自作蓄電池 | 家庭用蓄電池 | |
価格 | 約50万円 | 約300万円 |
容量 | 3kWh程度 | 4〜16KWh |
設置時間 | 1週間ほど | 5〜7時間 |
保証 | なし | メーカー・工事会社 |
見た目 | 乱雑になりやすい | スマートな見た目 |
安全性 | 低い | 高い |
雷などの影響 | 受けやすい | 対策あり |
出力安定感 | 不安定 | 安定 |
蓄電池を自作できた場合、やはり費用は家庭用蓄電池の1割ほどで設置ができ安価です。
ただ、自作した蓄電池は保証が全くなく、さらには壊れやすい可能性が高いです。「作ってみたものの、壊れてしまって稼働していない」となると勿体無いので、家庭用蓄電池を視野に入れてみてはいかがでしょうか?
【まとめ】安全にオフグリットするなら家庭用蓄電池と太陽光を専門事業者に依頼しよう
自作する蓄電池は、初期費用の安さと専門的なDIYとして注目されています。
しかし、蓄電池を扱う側から見れば、電気や蓄電池の知識がない方が生活に使用する蓄電池の自作は「危うい」の一言に尽きます。
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